太宰治は、『新樹の言葉』で甲府盆地をこう表現している。「よく人は、甲府を、「擂鉢(すりばち)の底」と評しているが、当っていない。甲府は、もっとハイカラである。シルクハットを倒(さか)さまにして、その帽子の底に、小さい小さい旗を立てた、それが甲府だと思えば、間違いない。きれいに文化の、しみとおっているまちである。」と。御坂峠はとても寒い・・、と天下茶屋を後に甲府に下りてきた太宰、盆地の冬をどのように感じていたのだろうか。作品がない。 この甲府盆地特有の気象も、地形地質に基づいている。 ありがたいことに、西宮克彦先生、石田高先生、藤本丑雄先生、桂田保先生、角田謙朗先生等多くの先達は努力を積み重ね、甲府盆地の地質について幾多の知見を残してくれた。そして今、トリプルジャンクションの全容解明に向け、国をあげての謎解きが始まった。 甲府盆地は、すり鉢の底でも、小さな旗を立てた帽子の底の町でもない。3つのプレートが"おしくらまんじゅう"をしている中心の町である。願わくは、中の"あんこ"は飛び出してほしくないものである。 悠久の浪漫を感じつつ、ワイングラス片手に夜景を楽しむ。贅沢とおもえるのは、私一人ではあるまい。
紫若記
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